#143 見据えるは更なる高み ベンチプレスジュニア日本一・坂下さんにインタビュー


 

 こんにちは。かなり日中も暖かくなり、春といった感じになってきましたね。今回のSophia Topicsでは、今年学長賞を受賞されたある方にインタビューをしてきました。
その方というのが、第21回ジャパンクラシックベンチプレス選手権大会74㎏級ジュニア部門優勝、日本新記録樹立という素晴らしい活躍をされた坂下竜一さん(法学部法律学科3年)です。

 「ベンチプレスってなんだ?」という方のために、軽く説明すると台の上に横になったところから、重りをつけたバーベルを押し上げるというスポーツです。ウエイトトレーニングの種目としてもポピュラーなので、トレーニングの一環としてやったことがあるという方も多いかもしれません。
 このベンチプレスを含めた3種目の記録を争う「パワーリフティング」という競技の中で、ベンチプレス部門ジュニア日本一に輝いたのが坂下さんということになります。
(参考:日本パワーリフティング協会公式サイト https://www.jpa-powerlifting.or.jp/powerlifting )
 
 今回はそんな坂下さんに、優勝までの道のりや日本新記録を出した現在の心境を伺ってきました!

写真:日本パワーリフティング協会
写真:日本パワーリフティング協会

 

優勝・日本新記録を振り返って

──まずは優勝おめでとうございます。今回の大会に出るにあたって、優勝は狙っていたのでしょうか?

坂下さん(以下略):目標として、優勝と日本記録を更新したいというのがありました。僕は高2の時からこの競技をやっていたんですけども、その時に日本記録取れそうで取れなかったんですよね。それがとても悔しくて、チャンスのある時には優勝して日本新記録を出したいという気持ちはありましたね。


──その目標を達成された時の気持ちを教えてもらえますか?

 ずっと目標にしてきたことだったので、すごい達成感がありましたね。ただ、直後は達成感があったんですけれども、今時間が経って振り返ってみると冷静になると言うか「まあこんなもんかな」という思いも出てきました。今回は日本新記録を達成したんですけれども、その上には世界記録もあるので今度はそこを狙っていきたいなと気持ちは切り替わっていますね 。

 


──そのときの周りの反響はどうでしたか?

 高校や大学の友人からは、「すごい奴だな!」という風に言ってもらえました。あとは、学長賞を頂けたのが、一番の反応だったのかなと思います。やっぱりそれを聞いたときは嬉しかったです。


──なかなかそういった経験をできる人も多く無いと思うんですけど、日本で一番になるってどういう感覚なんですか?

  僕の場合は、日本一と言ってもジュニアという区分(19歳~23歳)の中での日本一なので。その上には一般というカテゴリーがあって今度は年齢関係なく日本一になりたいと言う思いが芽生えました。まだ上もあるので、今はまだ満足はしてないですね。次の目標が見えてきて、またやる気が出てきたという感じですね。


──世界記録との距離感はどのように感じていますか?

  今回僕が達成したベスト記録が181㎏なのですが、世界記録は200㎏なので結構遠いなとは感じています。ただ、不可能ではないかなという思いもあります。

写真:坂下さん提供
写真:坂下さん提供

 

ベンチプレスを始めたきっかけ

──競技を始めたきっかけを教えてください。

  競技を始めたのは高2の時でした。当時、特に部活にも入らず生徒会の活動をしていたんですけど、時間もあって運動不足を解消したいなと思い、市営のジムに行ったのがきっかけです。そこでベンチプレスをやってみたら、40kgも上がらなかったんですね。それが悔しくて、ちょっと何とかしたいなと思ったのがきっかけです。
 競技としてのベンチプレスにのめりこんだきっかけは、そのジムにたまたま通っていた高校のOBがいたことでした。そのOBと仲良くなって、ベンチプレスを教えてもらったりしたんですけど、そのOBに誘われて試合に出るようになりました。


──生徒会に入っていたとのことですが、運動は得意だったんですか?

  球技とかは苦手ではなかったんですけど、持久系がとにかく苦手でした。根性がなかったんですよね。


──運動神経の有無は、この競技にとって重要なんですか?

  運動神経って、自分の思った通りに体を動かせるかどうかのことだと思うんですね。ベンチプレスの記録を上げるにおいても、自分の思った通りに体を動かせるかというのは大事ですね。それができるかどうかによって、練習の効率が変わってきます。
 ただ、それよりも大事なのは、地道な練習をコツコツと続けられるかという部分だと思います。


──先ほど根性がないとおっしゃっていたんですが、練習を継続するという意味での根性はあったんですね。

  そういうことだと思います。ベンチプレスを教えてくれていたOBの方にも「お前は気持ち悪いくらい真面目だな」と言われたことがあります。「ベンチプレスが強くなりたい」という思いはあったので、その目標に対して練習を継続していくという意味での根性はあったと思います。「強くなりたい」という思いがあったからこそ、とは思います。嫌いなことだったら続けられていないと思うので。


──とはいっても、トレーニングのやる気が出ない日もあったりするんじゃないですか?

  ジムに行く気起きないな~という日もあります。ただ、ジムに行っちゃえば何とかなるんですよね。それを自分でもわかってるんで、気乗りしない日でもテンション上げて無理やり行くようにしてます。もう行っちゃったらこっちのもんです。


──競技として追及されている種目はベンチプレスだけとのことですが、なぜベンチプレスにだけはまったのでしょうか?

  それすごくよくされる質問なんですよね...... ただ、好きだなという感覚は確実にあるんですけど、なぜかといわれるとよくわからないんですよね...... 世界一になれたらそれが分かったりするのかなとも思ったりします。


──具体的にどういった時に好きだなと感じるのでしょう?

  ベンチプレスを挙げている最中もそうですし、記録が出たときにもそういった感情が芽生えますね。記録が目に見えると、モチベーションにつながりますね。

日本記録を樹立した時の瞬間 画像:日本パワーリフティング協会
日本記録を樹立した時の瞬間 画像:日本パワーリフティング協会

 

生活の中のベンチプレスと考え方の切り替え

──大学生活との両立は大変でしたか?

  競技生活が自分の中でルーティン化されていたので、そこまで大変という感覚は無かったですね。


──トレーニングはどのくらい行っているのですか?

  週3~4回で、1回の練習は3~4時間くらいです。そのうち2時間~2時間半くらいはベンチプレスをやっていて、残りで補助の種目をやっているイメージです。


──筋トレってそんなに長時間できるものなんですね。

  トレーニングではなくて、あくまで練習という位置づけなので。毎回自分の限界に挑戦するようなことをやっていたら、ここまでできないと思います。そういう意味では、負荷を考えながら練習しています。


──トレーニングと練習は違うものなんですね。

  明確に異なりますね。自分の中では、練習はベンチプレスのクオリティを上げていく作業で、トレーニングは筋肉を大きくするための作業です。


──ベンチプレスのクオリティを上げる作業とはどういったものなのでしょう。

  例えば野球だったら、素振りをして自分のフォームを確認すると思います。そのような感じで、軽い重量で自分の上げやすいポイントを探したり、フォームを修正したりします。
  以前は、トレーニングと練習を分けて考えずに、闇雲に重量を上げていたんですけど、それでは記録が伸びないということに気づきました。そこを分けて考えられるようになって、記録が伸びたと自分では考えています。


──そのように考えられるようになったのはどういったきっかけがあったのでしょうか。

  今だとSNSなどでトップ選手が練習法を発信していたりして、そういうのを参考にしたりしました。また、2年ほど前から競技専門のジムに入って、周りの人たちと話しているうちにそういった意識がついてきました。以前も分けて考える必要性は感じていたんですけど、実際にはひたすら重い重量を上げて、その限界まで追い込んでる感に満足してしまっていました。また、がむしゃらにやっていたころは、オーバートレーニングで怪我をしてしまったこともあったので、そういったことも考えを変える要因ではありました。


──大学生活の中で記録はどのくらい伸びましたか?

  大学1年の時に、それまでの受験も含めて競技を離れた時期がありました。そのあと、1年生の10月頃に復帰したんですけど、その時が140㎏でした。そこから2年強で40㎏伸ばしたことになるので、これに関しては自分でも結構な伸び幅だなと思います。


──最後に、今後のビジョンについて教えてください。

  自分は働きながらも競技を続けていきたいと思っています。そう考えると、今のように1回の練習に長時間割くことは難しくなると思うので、短い時間の中でどうやって練習していくかは今のうちから考えています。世界記録の更新と、一般カテゴリーでトップになるという新たな目標をクリアしたいですね!



 日本新記録を達成しても、新たな目標に気持ちが切り替わるのがさすがだと感じました。そして、「練習の前に気乗りしない日はあるけど、ジムに行ってしまえば何とかなるし、それを自分でもわかっている」という言葉が印象的でした。物事を継続していく、ということに長けているからこそ、今回の快挙があったのだなと思わされます。

  
 今回のSophia Topicsは以上です。次回もお楽しみに!